ISO 13485:2106の本質

ISO 13485:2016ISO/TC210委員会によるPractical Guide(プラクティカル・ガイド)が2017.9.25に公開されました。この日本語の翻訳版の発刊が予定されていますが、英文でこの内容を確認してみますと、2016版は2003版の延長にあるのではなく、全く品質マネジメントシステム(QMS)を作り直さなければならない程の変更要求を伴っていることが判ってきました。

 

 

2016版による品質マネジメントシステム構築は、明らかにMDSAPを意識したもので、MDSAP の参加国のうち最も厳しい米国の要求レベルに合わせるための要求事項から構成されていると確信できます。なぜならば、2016版にて追加された要求事項は、米国連邦法820項(QSR)に規定された要求事項と、ほぼ同じ内容に沿ったものであるからということが言えます。2016版はマイナー変更を除くと大小合わせて48章の変更がされていますが、そのうち明らかにQSRから引用されていると判るのは22章に及んでいることが、その証左となり得るものです。

 

 

したがって、ワールドクラスに必要な品質マネジメントシステムは、2016版プラクティカル・ガイドによる要求事項に従うことが必要となり、法的要求事項を満足させられるように構築しなければならないものです。つまり法的要求としてMDSAP対応するのであれば、MDSAPの求めるレベルに合わせること、即ちほぼQSR要求を満足できる品質マネジメントシステムでなければならないと結論づけられることになります。

 

品質マネジメントシステム

品質マネジメントシステムは、医療機器メーカーにとって法的要求によりその枠組みを構築しなければならなりませんが、規制要求事項を一貫して満たすことができる医療機器を提供する能力があることを結果だけで説明しようとする傾向を経験的に見てきました。

 

その能力があることを実証するには、「原因と結果」の関係を理解していないと誤った判断をする可能性があります。

 

品質マネジメントシステムを正しく構築でき、その運用が効果的になされていれば、結果は自ずと良くなるということです。要求事項を従来からの考えに当てはめるようなことがあると、要求事項に基づいて正しく構築できたということになりません。要求事項を正しく理解して要求事項の通りに構築し、その構築された通りに運用するということが必要になります。

 

そうやって構築した品質マネジメントシステムの運用実績が結果として得られることとなります。したがって、実証するためには品質マネジメントシステムを正しく構築できたことで、その結果として得られた設計のアウトプット、生産された製品あるいは活動の記録が、法的要求を満足すると言えるようになるのです。

 

QSRとTPS

米国FDAによるQSRQuality System Regulation CFR part 820)はISO 13485を考慮して作成され、ISO 13485の初版1996よりも早い1995に公布されています。

 

FDAに認可された医療機器は、このQSRに従って品質マネジメントシステムを構築する必要があり、その大変さはMDDのためISO 13485認証を取得するのとは違うものがあります。要点になるのはQSR要求事項を”実証”するために品質マネジメントシステムを構築するというアプローチが必要ということです。

 

 

いわゆる日本的な個別最適のアプローチでは”実証”できる材料にするのが難しいですが、日本的な中でもTPS(トヨタ生産方式)によるとQSR要求と摩擦を起こすことがありません。TPSはシステムの枠組みを持っているため、その枠組み自体が”実証”するための証拠として活用できるというものです。枠組みの中心になるのが標準化であり、標準三票と呼ばれるのがその特徴的なもので、「標準化しそれを文書化する」というキーポイントを抑えることができるものです。また違った視点では、トヨタには特殊工程という概念があります、これは「一貫して生産できる」ものづくりを行うための良品条件を求めていて、その考え方はバリデーションと酷似しています。ですからプロセスバリデーションへの適用が容易になります。

 

つまり、枠組み(フレームワーク)を持ち、QSR要求事項のキーポイントを実現できているということが”実証”できる材料になるということです。